お客様各位

　十月も半ばが過ぎ、ようやく心身ともに落ち着きを感じるようになりました。
皆さまにおかれましては如何お過ごしでしょうか。年を重ねるごとに時の流れの速さに呆れてしまいますが、今年もご挨拶を申し上げられることの幸せをかみしめながら、衷心より感謝申し上げます。

　さて、令和の時代も五年を過ごしましたが、世相も気候も相変わらずの激動ぶりで、恥ずかしながら、個人としてはどうにもならず、呆然と過ごすことがますます増えております。どうにか、なんとか、ならないのか、という思いはつのりますが。先ずは脚下照願、とにかくこの厳しい時代を生き抜くことが最優先、と自戒するばかりです。
我が家族、社員とその家族、そして、皆さまから変わりなくいただいてきたご信頼を損ねないことこそが、わたくしにとっての「明日へのチカラ」と思っております。
　思えば、今から三十余年も前でしょうか、南三陸町志津川の海で伊勢エビの幼生を見つけた折りの衝撃は未だに忘れられません。それがわたしにとっての温暖化の兆しであったのは、その後の様々な状況が証明しています。当時は、九月の半ばを過ぎれば「宮城県産牡蛎」の初出荷を待ちかねるお客様に言い訳をするのに四苦八苦しておりました。時を経て、本年は全県初入札は十月末にせざるを得ないほどの生育不足です。
原因は様々であり、全世界的な異常気象、気候の中での事ではありますが、残念至極なことであり、今後には大いに不安を抱いております。
とは申せ、シーズンインとなりましたら、全力を挙げて「良い牡蛎」を自言を持って皆さまにお届けできますよう努力する所存です。
　多様な環境変化の中で様々な産物の変化変容が進んでおりますし、技術の革新により「季節の便り」がかなり曖味になっております。イチゴの旬がいつかを忘れるようになって久しいことです。「牡蛎」も冷凍保存技術が進んだり、先述のとおり、出荷時期がかなりずれこんだりして旬が曖昧になってきております。その中でどのようなご提案をしていけるのかは今後の大きな課題であろうと考えております。
　ただ一つ言えますのは、生にせよ、加工にせよ、冷凍にせよ「良い牡蛎」を選び、「最良の製品」としてご提供もうしあげる姿勢を揺るがしてはならない、ということです。自然環境、技術の進歩、それに基づく産地や消費地の状況をしっかりと見定めながら、当「かき徳」は忘れられない「あの味」を追及して参りたいと思う所存です。

上記ご明察いただき、今後ともかわらぬご贔屓を賜りますようお願い申し上げます。